楽しいレッスンは、コーチだけでは作れない

水泳を教える中で、伝えないといけないことって、たくさんあります。

手の動かし方。
足の動かし方。
呼吸の仕方。

もちろん、そういった水泳の知識も大事です。

でも、その前に大切なことがあると僕は思っています。

まず、コーチ自身が一緒に楽しむこと。

これが、一番最初なんじゃないかなと思うんです。

子どもはコーチの鏡。コーチは子どもの鏡

僕はよく、

「子どもはコーチの鏡。コーチは子どもの鏡」

という話をします。

レッスンって、コーチだけが作るものではないんですよね。

コーチと子どもたち。
コーチと生徒さん。

その場にいるみんなで、一緒に作り上げていくものだと思っています。

コーチが一生懸命に教えようとしている。でも、子どもたちは話を聞かずにふざけてしまう。

そうすると、だんだんコーチもイライラしてきます。

「なんで話を聞いてくれないんだろう」
「なんでうまくいかないんだろう」

反対に、コーチがむすっとして、面白くなさそうにしていたらどうでしょう。

そのレッスンで、子どもたちだけに「楽しんでね」と言っても、やっぱり難しいですよね。

僕が第三者としていろいろなレッスンを見ていて、「ああ、いい雰囲気だな」と思う時があります。

そんなレッスンは、子どもたちだけではなく、教えているコーチも笑顔なんです。

お互いが笑顔でいる時間。
お互いが楽しんでいる空間。

必ずそうだとは言い切れないかもしれません。でも、僕が「いい指導だな」と感じるレッスンは、だいたいそんな空気を持っています。

水泳の楽しさを、コーチの言葉に乗せる

だからコーチには、自分が教えることを楽しんでほしいんです。

僕だったら、

「水泳って、こんなに楽しいんだよ」
「浮くって、こんなに気持ちいいんだよ」
「泳ぐと気分転換になるよね」

そんなことを伝えたい。

ただ泳ぎ方を説明するだけではなくて、自分が感じた水泳の楽しさや気持ちよさも、一緒に言葉に乗せて伝えてほしいと思っています。

もし今、水泳を楽しいと思えていないなら、まずは自分が泳いでみる。

タイムを出すことだけが、水泳の楽しさではありません。

泳いで健康になること。
体重が減ること。
水に浮いた時に「気持ちいいな」と感じること。

どれでもいいんです。

自分が水泳のよさを感じたうえで、その感覚を生徒さんに伝えてあげる。

「こんなにいい水泳を、僕は教えているんだ」

そんな気持ちは、きっと表情にも声にも、レッスンの雰囲気にも出てくると思います。

「言ったから終わり」では、伝わらない

もちろん、水泳を教えるには知識も必要です。

でも、知識があることと、その知識を相手に伝えられることは、同じではありません。

たとえば、クロールの呼吸を教える時。

「次は横を向いて呼吸しようね」

これだけで終わってしまうレッスンも多いんです。

いや、それだけでは伝わらないよね、と僕は思います。

コーチが言ったかどうかではなく、生徒さんが聞きたくなるか。やってみたいと思えるか。そこまで考えるのがコーチの仕事ではないでしょうか。

だって、コーチは導く人です。

「こっちだよ」と言うだけではなく、相手の歩幅に合わせて、一緒に進んでいく。

「はい、言いました。おしまい」では、導いたことにはならないと思うんです。

最初に「えっ?」を作ってみる

では、どうすれば聞いてもらえるのか。

ひとつは、最初に「えっ?」「どういうこと?」と思う言葉を入れることです。

興味を持ってもらい、一度こちらに気持ちを向けてもらってから、本当に伝えたいことを説明する。

これは、SNSの発信やブログ、本を書く時にも使われている方法です。

まず、相手が気になっていることや「面白そう」と思うことを伝える。そこで興味を持ってもらってから、大切な内容に入っていく。

水泳の説明も同じです。

「クロールの呼吸って、しんどいですよね。実は、横を向いてから息を吐こうとすると、苦しくなりやすいんです」

息を止めたまま泳いで、横を向いてから息を吐き、さらに吸おうとする。

あの短い時間の中で、吐いて、吸って。これって難しいですよね。焦りますよね。

うまく吸えないまま顔を水に戻したら、次の呼吸までが、もっと苦しくなります。

だから、横を向く前に水の中で息を吐いておくんです。

そうすれば、横を向いた時にすることは、息を吸うだけ。吐く、吸うというリズムができて、呼吸が楽になります。ぜひやってみてくださいね。

こんなふうに、最初に「呼吸がしんどいですよね」と相手の気持ちをつかみ、「実は、横を向いてから吐くと苦しくなりやすいんです」と興味を引く。

そのあとで、理由と練習方法を伝える。

同じ内容でも、言葉の順番を変えるだけで、伝わり方は変わります。

悩みに共感してから、解決方法を伝える

もうひとつは、生徒さんが感じている不安や悩みから始める方法です。

「こんなことで困っていませんか?」
「こうなるのが怖くありませんか?」

最初にそう問いかけると、聞いている人は、

「そうそう、私もそこに悩んでいた」
「よくぞ言ってくれました」

という気持ちになります。

自分の悩みを分かってもらえたと感じるから、その先の解決方法も聞きたくなるんです。

これはブログや本では、よく使われる伝え方です。

でも、水泳のレッスンでは、意外とやっていないコーチが多い。

知識をそのまま渡すのではなく、どういう順番で話せば届くのか。どんな言葉なら「やってみよう」と思ってもらえるのか。

そこまで考えると、説明はもっと伝わりやすくなると思います。

レッスンを、一緒に作ろう

今日、一番伝えたいことはシンプルです。

コーチだけでレッスンを進めるのではなく、子どもたちや生徒さんと一緒にレッスンを作ってほしい。

そのために、まずコーチ自身が楽しむ。

「水泳って楽しいよ」
「できるようになったら、こんなに気持ちいいよ」

その思いを、自分の言葉に乗せて伝えてほしい。

そして伝える時には、最初に興味を引く言葉を入れてみる。相手の悩みに共感してから、解決方法を伝えてみる。

コーチは、ただ知識を話す人ではありません。

相手の歩幅に合わせながら、一緒に「できた」へ向かっていく人です。

子どもはコーチの鏡。
コーチは子どもの鏡。

コーチが笑顔なら、その笑顔はきっと生徒さんにも伝わります。

今日のレッスンを、一緒に楽しんでみてくださいね。