水が怖かったNさんが、1年6ヶ月で100m個人メドレーを泳げた理由。

こんにちは。楽泳スイミングの中原です。

今日は、どうしても伝えたい出来事があります。 水が怖かったNさんが、1年6ヶ月かけて100m個人メドレーを泳げるようになったお話です。

最初の一歩は、80代の女性の“挑戦”から始まりました。

Nさんのお仕事は、患者さんのリハビリをお手伝いすること。

ある日、診ていた80代の女性がこう話したそうです。

「世界マスターズ水泳に出るんよ」

2023年、世界大会が福岡で開催されていた時のことです。

その女性が楽しそうに水泳の話をする姿を見て、心の奥にあった「もう一度泳いでみたい」という気持ちが静かに動き始めたそうです。

「私も泳いでみたい。怖いけど、やってみたい。」

その想いを持ちながら見つけた楽泳スイミングのHP。
体験フォームからのお問い合わせからNさんと楽泳スイミングのご縁が始まりました。

◆ 初めて会ったNさんは、水の中に入るだけで精一杯だった

初回レッスンの日。

Nさんはプールサイドに立ちながら、そっと深呼吸をしていました。

水に入るのも、恐る恐る。

歩くのも、バランスをとりながら、そろりそろり。

水が怖いという思いは表情や行動に現れていました。僕は急がせず、ゆっくりゆっくり水と仲良くなる時間を大切にしました。

だから、まずは水に慣れるところから。歩く、回る、太ももを上げる。ただ水の中で動いてみることを一つずつ積み上げていきました。

少しずつ動きが大きくなり、表情が和らいでいき、そして笑顔も増えてきました。その笑顔を見た瞬間、

「あ、この方は絶対に泳げるようになる」

そう確信しました。

◆ 楽泳スイミングだからこそ、大人にも“水慣れ”を1から

Nさんには、壁を持って呼吸する練習。

潜る練習。

浮く練習。

子どもと同じ水慣れを、年齢に関係なく1から行いました。

大人だからこそ、過去の経験から生まれる怖さは深くなります。

その怖さに寄り添うのもコーチの仕事です。

僕は、Nさんが「自分でできた」と納得できるまで絶対に急がせませんでした。

“できた”と感じる基準はコーチではなく、Nさん自身が決めるものです。

時間をかけることこそ、結果的に一番の近道になるからです。

コツコツと飽きることもなく、壁を持ちながら鼻から息を出す練習をしている姿が今でも思い出されます。

◆ 月2回のレッスン+自主練。恐怖心と一緒に進んだ日々

Nさんは月2回のレッスンに加え、時間があるときは週1回の自主練習を続けました。

恐怖心と向き合いながら、でも前に進みながら。

それは本当に大変な道のりだったはずです。

それでもNさんは毎回、

「今日はここまでできました」

と小さな成長を持ってきてくれました。

上達。成長。そしてダイエットという嬉しい変化までついてきて、

心も体もどんどん前向きになっていくのを感じました。

コツコツやってきた道のりがあるからこそ、振り返ると頑張ったことが自信になっていったのだと思います。

◆ 背泳ぎ → クロール → バタフライ → 平泳ぎ

少しずつ積み重ねて、ついに“4種目”へ

水慣れが整ってからは、順番に泳ぎを習得していきました。

常に上を向いているので呼吸がしやすい『背泳ぎ』

背泳ぎと同じように交互に手足を動かす『クロール』

タイミングが重要な『バタフライ』

泳ぎ方が今までの種目とは違う『平泳ぎ』

この順番で指導していき、泳げるようになりました。

指導する順番も工夫しました。“できるかも”を積み重ねていくことで、不安を小さくしていくためです。

◆ 最終日に向けて立てた目標

「100m個人メドレーを泳ぎましょう」

新しいお仕事が決まり、パーソナルレッスン(個人指導)の最終日が決まりました。

残された時間は多くありません。

そこでNさんと一緒に決めた目標が、

100m個人メドレー。

今まで一緒に練習してきたからこそ、距離や泳法で泳げたというかたちにしたかったんです。

初めてのターンの練習をして迎えた次のレッスン日。

ウォーミングアップを見て、もしかしたら泳げるかもしれないと思った僕はやってみますかと声をかけてみました。

そして...

Nさんはついに──

100m個人メドレーを泳ぎ切りました。

泳ぎ終えた後の表情を、僕は一生忘れません。

100m、それも25mずつバタフライ・背泳ぎ・平泳ぎ・クロールを立ち止まらずに泳ぐということはかなりしんどいです。

しかし、泳ぎ終わったあとの表情は達成感と泳げたという安心感でいっぱいでした。

喜びと、少しの信じられなさが混ざった、あたたかい笑顔でした。

◆ 最後に

水が怖かった方が、

壁を持ちながら水に入ることから始まり、

1年6ヶ月で100m個人メドレーを泳ぎ切る。

これは簡単なことではありません。

でも、Nさんはそれを成し遂げました。

僕はコーチとして、ただ技術を教えただけではありません。

“できるかも”と思える小さな階段を一段ずつ作り続けた。

そして、それを登り続けたのはNさん自身です。

僕もNさんと一緒にパーソナルレッスン(個人指導)をさせていただき、Nさんから学ぶことがたくさんありました。
ありがとうございます。

最後にどうしても伝えたい言葉があります。

「人はいつからでも変われる。
泳ぎは、その背中をそっと押してくれる。」

Nさん、心からありがとうございました。

これからも、その前に進む力を大切にしてください。新しい挑戦応援しています。
そして、また一緒に練習する機会ができたら次はマスターズ水泳大会で一緒に泳ぎましょうね♪